【ソウル聯合ニュース】韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は16日、2020年に北朝鮮軍が海上で韓国人男性を射殺した事件に対する事実上の再調査を行った結果、当時の文在寅(ムン・ジェイン)政権が事件を不当にゆがめたと判断し、関連情報を公開することを決めた。
今年1月、大統領選候補として射殺された男性の遺族と面会した尹氏(国民の力提供)=(聯合ニュース)≪転載・転用禁止≫
男性は海洋水産部所属の公務員で、20年9月21日に黄海で漁業指導船乗船中に行方不明となり、翌日に北朝鮮側海域で北朝鮮軍に射殺された。韓国当局は当時、男性が北朝鮮側に越境しようとしたと断定したが、尹政権はこれが誤りだったと判断した。故人の名誉回復を求めてきた遺族は「真実解明に向けた第一歩」(男性の兄)と歓迎の意を示している。
大統領室の国家安保室は同日、同事件の遺族が起こした情報公開請求訴訟で敗訴した政府側の控訴を取り下げ、遺族に事実上の謝罪をした。
国家安保室は報道資料で、「国民が北の軍に殺害されたにもかかわらず遺族に死亡の経緯もきちんと説明しないまま情報を制限していた過去の不当な措置を是正し、国民の知る権利を満たすため寄与したい」と表明した。
海洋警察は同日午後、男性が越境したと断定できる根拠はないとする最終捜査結果を発表。ギャンブルによる借金で精神的なパニック状態になり、現実逃避の目的で越境したと判断されるとした2年前の発表を覆した。
大統領室は、文政権の青瓦台(大統領府)が南北の対話ムードを損なわないよう北朝鮮の顔色をうかがい、事件に関し適切な措置を取らなかったと判断している。
大統領室の関係者は聯合ニュースの取材に、文政権が北朝鮮への越境と断定したことが一番の問題だとし、「北の軍の傍受資料などを根拠に越境と断定するなど話にならない」と指摘した。別の関係者は、「故人の意図が何であれ、国民の命と安全を守るのは国の最優先の責務だ」と述べ、文政権の対応を批判した。
事件を巡っては韓国軍が北朝鮮軍の内部通信を傍受し、射殺前に男性を救出できたにもかかわらず傍観していた疑いがある。だが、文政権の青瓦台が国防部や海洋水産部、海洋警察などから報告を受け、それを基に指示した記録は大統領記録物として15年にわたり事実上「封印」されるため、今すぐ公開することはできない。
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