【ソウル聯合ニュース】黄海を漂流していた韓国の男性公務員が北朝鮮軍に射殺された2020年の事件を巡り、大統領記録物を管理する大統領記録館が遺族による事件関連資料の公開請求に応じなかった。
男性の遺族(左)は5月25日、大統領記録館に情報公開を請求していた(資料写真)=(聯合ニュース)
遺族側の弁護士によると、大統領記録館から22日、関連法と施行令に基づき「情報公開請求に従えない」との通知があったという。
同館は、情報公開請求のあった資料が大統領指定記録物の場合、国会在籍議員の3分の2以上の賛成または管轄高裁の令状がある場合に限り閲覧などが可能だとし、閲覧できない現状では「(事件関連資料の)存在の有無を確認できない」と説明した。大統領指定記録物のリストも大統領指定記録物であるため、探すことができないとした。大統領記録物は最長15年間(私生活に関する資料は最長30年間)、閲覧が制限される。
同館の館長は、国会在籍議員の3分の2以上が賛成するか、あるいは高裁の令状が発付された場合について、「その時に事件関連の資料が指定記録物にあることが確認されれば公開可能だ」と話している。
同事件は文在寅(ムン・ジェイン)政権時代の20年9月に起きた。海洋水産部所属の公務員だったこの男性は9月21日に北朝鮮に近い韓国北西部の小延坪島付近で漁業指導船乗船中に行方不明となり、翌日に北朝鮮側海域で北朝鮮軍に射殺された。
海洋警察は男性が行方不明になった8日後に中間捜査結果を発表し、軍当局と情報当局が傍受した北朝鮮の通信内容や本人の債務などを根拠に、男性が自ら北朝鮮に渡ろうとしたとの判断を示した。だが、今月16日に発表した最終捜査結果では、自らの意思で越境したと断定できる根拠は見つからなかったとして、文前政権の判断を覆した。
北朝鮮への越境を否定していた遺族は、真相を知るため先月下旬に情報公開を請求した。ソウル行政裁判所が昨年11月に遺族への公開を命じた情報で、20年9月22日に青瓦台(大統領府)が国防部(傘下機関を含む)や海洋警察庁、海洋水産部から報告を受け、指示した内容を記した資料などだ。
遺族側の弁護士は「文在寅前大統領が退任する際、遺族が勝訴した情報とこれに対する目録までも大統領指定記録物としたことが確認された。これは遺族の知る権利を深刻に侵害するもので、文前大統領が何かを隠していると考える」と批判した。引き続き行政訴訟などの法的措置を取る予定だという。
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